エビデンスレベルは高くないが往診医として伝えたい医療実践「ヒドロキシジン」
- 訪問診療日記
エビデンスレベルは高くないけれども、往診医として他の方と共有したい話を投稿させていただきます。
第1回はヒドロキシジンを取り上げたいと思います。
なぜ、第1回として「ヒドロキシジン、商品名アタラックスP」かというと、2023年の医学雑誌「緩和ケア5月号」において「ヒドロキシジンに役割はあるか」というタイトルの論文が出ていたのを読んだのがきっかけです。
この論文のまとめは、
終末期を含めたがん患者のせん妄に対してヒドロキシジンの有用性の根拠は乏しく、第一選択肢となりにくいが、他の注射剤では対応が困難な際には選択肢となりうる。
ということで、そのまま読めば、積極的に勧めるものではないけれども使える場面はある、ということかと思います。
ヒドロキシジン、アタラックスpは1950年代に出てきた薬で、いわゆるOld Drugと言ってもよい部類と存じます。
この論文を読んだ時に、私は、この薬剤をあえて取り上げているところをみると、少なからぬ専門家が実際の医療現場においては、この薬剤を使ってみて良かった経験があるのではないかと考えました。
往診医となっている現在、私自身は大変重宝しており、必須薬の1つとしていつも往診車に入れています。
私が実際に使っているのは次のような症例です。
がん患者のせん妄、認知症患者のせん妄、心不全時の胸苦の緩和、癌疼痛の軽減(オピオイドとの併用)、腹部疼痛(イレウス、尿路結石)の緩和、めまい(発作性頭位めまい)の抑制、嘔吐下痢時の嘔気の緩和
こうした症状に対してこの薬剤を使用するメリットを往診医の立場からまとめました。
4点ほどあります。
1)筋肉注射、皮下注射できる
2)筋肉注射、皮下注射で静脈注射と効果は変わらない。静脈ライン確保が難しい在宅では大きなメリット
3)即効性がある。
4)安全性がある。
呼吸抑制がない。血圧や脈拍への影響が少ない。
注意点としては、
1)点滴投与ではあまり効果が実感できない。
2)薬物依存性はある
3)妊婦、授乳中の方には使用できない
4)痛い
があります。