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カンボジア・医学教育・そして平和

  • 所長のひとりごと

2025年9月14日 15:39

8月21日と22日にカンボジアで実施された救急医療対応研修に関する報告書です。本報告では、動画付きの本格的な医療テキストの完成という研修の成果を共有します。同時に、研修で得た知識が現場の実践に結びついていないという課題や、日本の救急医療の現状との比較、そしてカンボジアの急激な経済発展や日本の国際的地位の変化といった現地での所感についてもまとめています。

## カンボジア救急医療対応研修の報告と課題
– 8月21日、22日の2日間(1泊2日)にわたり、カンボジアで救急医療対応の研修を実施した。この取り組みは2008年から関わっており、今回はJICAプロジェクトの3期目にあたる集大成と位置づけられている。
– 今回の活動では、カンボジアの現地語(クメール語)で救急初期対応のテキストを作成した。
– テキストには30を超える動画のQRコードが埋め込まれており、動画とテキストの両方で学習できる構成になっている。
– カンボジアでは自国で作成された医療テキストがほとんどない状況であり、今回のテキスト作成は長年の悲願であった。
– 日本の薬学部出身の優秀なカンボジア人通訳の協力も得て、医学用語辞書も付属したテキストとなった。クメール語は、医学用語が確立しておらず、これが長く医学教育の遅れにつながっていた。
– テキスト作成は大きな成果であったが、現地で活動するJICA海外協力隊の看護師から、研修内容が現場の実践に十分に結びついていないという指摘があった。
– 具体例として、救急事案でドレナージ処置後に患者が呼吸停止した際、スタッフがその変化に気づかず対応が遅れた事案が共有された。
– このことから、研修で得た知識が実践で活かされるまでには、まだ継続的な取り組みが必要であると認識した。
– 研修で得た知識を、カンボジアの医療現場で実践として定着させるための具体的な方策は、今後の課題として残っている。

## 日本の救急医療の現状と課題
– 過去の日本も救急対応が十分でなかった時期があり、カンボジアの現状は日本の過去の姿と重なる部分があると感じられた。
– 日本では、平成3年の救急救命士制度の導入、平成7年の阪神淡路大震災による災害医療の必要性の認識、そして平成8年からの医師臨床研修必修化(救急分野が必須項目に)などを経て、20年から30年の歳月をかけて救急医療が大きく進化した。
– しかし、現在の日本においても、夜間や休日、あるいは小さな病院や療養型の病院での初期救急対応にはまだ改善の余地が多く残されている。

## カンボジア訪問で感じた所感
– 若者の多さと日本の高齢化
– カンボジアでは街中に若い人が溢れていた。日本の地方(私の居住は徳島県吉野川市山川町)では若い人や子どもを見かけることが少なくなっており、大変な差であった。日本の異常な高齢化を痛感した。
– 急激な経済発展
– 今回訪れたシェムリアップ空港は新しく綺麗で、そこに至る道路も整備され、空港内のトイレも非常に綺麗になっており、2008年のカンボジア初訪問時と比較して、国の著しい経済発展を実感した。
– 中国の影響力増大と日本の地位低下
– 街の至る所で中国語の掲示物が増加しており、中国経済の強い影響が見られた。
– 過去にはカンボジアの病院訪問時に頻繁に求められた医療資材の寄付依頼がこの2、3年は全くなくなり、日本の相対的な経済的地位の低下を感じざるを得なかった。
– 日本の相対的な経済的地位の低下が、今後の国際協力活動における影響力に変化をもたらす可能性がある。

– 多様性と世界平和への考察
– カンボジアへの途上、バンコク空港での乗り換えバスで、ヨーロッパ、アジア、アフリカ系、インド系など多様な人種の人々がぎゅうぎゅう詰めの混雑した中で笑顔で楽しそうに話している光景に遭遇した。
– この様子を見て、異なる背景を持つ人々が平和に共存できる可能性を感じた。
– この風景、どこかで見たことがある、と感じた。後日思い出した。「We Are The World」のビデオだ。
(We Are The World:1985年にアメリカで発売された歌で、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチらの著名なアーティストが「USAフォー・アフリカ」として集結して完成させた。イギリスで活躍するミュージシャン、ボブ・ゲルドフが提唱したバンド・エイドの成功に触発されてアフリカの飢餓と貧困層を解消する目的で作られたキャンペーン・ソング。)

– カンボジア現地では車で移動していた。車のドライバーが車中で、カンボジアとタイの間の紛争について「戦争なんてしていいことなんかない」「本当にクレイジーだ」と話していた。一般の人々は戦争を望んでいないという認識を深めた。一部の指導者の意向が対立を生んでいるが、普通の市民が暮らす世界は平和であり得る可能性を感じて帰路についた。

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