往診医にとってコロナ感染とは何だったのか
- 訪問診療日記
2024年6月2日 12:57
まだコロナ明けと安心する訳にはいきませんが、往診医にとってコロナ禍とは何だったのか振り返ってみたいと思います。
6つの症例パターンに分けてみました。
1 発熱したが、外来受診できない
発熱したが、外来受診できない方への往診は多数ありました。発熱した患者さんのために発熱外来を設けた医療機関もありましたが、指定の時間には交通手段がなくて行けない方から往診の依頼がありました。患者宅で抗原検査を行い、必要な場合は処方しました。
2 脚が立たない、診て欲しい
急に脚が立たなくなったので往診して欲しいという依頼が何度かありました。コロナウイルス感染ピーク時には、その中のかなりの割合がコロナウイルス感染によるものでした。発熱よりも脚が立たない症状が先行するケースも多く、常に感染を想定した準備をして往診しました。
3 発熱に加え他症状(呼吸器症状以外)あり、受診先がない
高熱があっても、コロナウイルス感染以外の病気のこともあります。しかし、発熱となると発熱外来以外では受け入れが困難な時期がありました。いきなり地域の基幹病院を受診しようとしても、紹介状を求められるケースもあり、往診して病状をみて紹介しました。尿路感染や胆道感染からの敗血症が多かったです。コロナ・インフルエンザの抗原検査をして陰性を確認してから搬送していました。
4 コロナ感染は確定、入院先がない
コロナウイルス感染症は確定していて、しかも呼吸状態が悪くなっているにも関わらず、入院先が確保できず、在宅で診療した症例も数件ありました。在宅酸素療法を導入し、抗ウイルス薬、デキサメサゾン等を使って治療しました。残念ながらお亡くなりになったケースもありましたが、一時SpO2 80%まで低下しながら救命できたケースもありました。
5 早期に退院して自宅療養となる重症患者
コロナ禍中は、さまざまな理由で早期に退院して自宅で濃厚な医療を行うことが増えました。がん治療中だが病棟がコロナ感染して早期退院した方、末期がんで酸素投与・中心静脈栄養等受けていたが早めに退院した方、間質性肺炎で酸素化が悪化しいたが病床逼迫等で早期退院した方、家族が面会できないことを苦にしてがん治療を中断して帰宅した方。がん治療中に肺炎や尿路感染が併発したが、入院することができず自宅で抗菌薬で治療した方等がありました。
自宅看取りが一時急増していました。
6 発熱外来
コロナピーク時は発熱外来もしていました。全数届け出時は保健所への報告が一番大変でした。新患のカルテ受付をし、処方をし、コロナ関連のレセプト処理をし、その上で保健所に報告すると時間があっという間に過ぎました。
コロナ禍で亡くなられた方には心から御冥福をお祈りします。
厳しい日々でした。ただ、往診医として診断と治療の幅を広げ、引き出しを増やすことができたことは貴重な収穫でした。今後に活かしていきたいです。