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怒りは往診の敵 (1)

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怒りは 往診の敵 というテーマで書かせていただきます。

所長の渡部は今、50歳代半ばになってきているのですが、怒りは人生の、人間の不幸の元であるということを強く思うようになりました。
この怒りの克服こそが自分の人生の、あるいはもっと大きく言えば人類の幸せの道であるというふうに考えるようになってきました。
ただ実際にはなかなかこの怒りの克服はできません。
日々、しょっちゅう腹を立てています。まだまだ道は遠いなと思いながら過ごしています。

怒りというのは、脳科学的には人間の根源的な感情と言われています。
なのでいたずらに制限するものでないとか、怒りがなかったら人間どうなるんだ、誰かが悪いことしても放っておくのかのか、といった議論もあります。

しかし、私はアルボムッレ・スマナサーラさん(スリランカの上座部仏教の長老)が「怒らないこと」、「怒らないこと2」という著書に書かれていますが、
人間にとって良い怒りなどない。あるいは人間にとって不幸を導く感情を「怒り」と定義しようという立場に基本的に賛成です。

怒りそのものの話をすると尽きないですし、私もそこまで深く勉強していないのですが、
往診現場、在宅医療の現場での「怒り」ということなれば、これはもう間違いなく大きな敵です。
正しい思考や判断の妨げにもなりますし、人間関係の妨げになりますし、避けなければいけないものです。
そういうわけで、自分や周囲の怒りという心の動きの分析と最小化、を図っていきたいと思っています。私の気づきが少しでも役に立っていただければ幸いです。

私がここで言う、怒りの定義は、
・程度については、心の底から怒ってるという怒りから、少しイライラしてるとかちょっと不機嫌であるというレベルまでの、大きいところから小さいところまで、全て怒りという定義の中で考えています。
・怒りの種類について言えば他者への怒りだけではなく、自分への怒り、「ああ、なんでこんなことしちゃったんだろ」という後悔や自己嫌悪 そういったものも怒りと考えています。
そういう前提で話を進めたいと思います。

じゃあ、なんで怒りは往診にとっていけないのか、往診現場にとって敵なのかっていうことについて、5点ほど挙げたいと思います。

1)仕事上のミスが多くなる
 怒っていると仕事上のミスが多くなるということであります。怒ったままで仕事をしている、往診現場で仕事をしていると、それがミスの元になります。

2)怒りは誤診を招く

ここで誤診とミスはどう違うのかですが、
1)で先ほどあげたミスは、本来やるべきタスクが正確に遂行できていないということです。
名前を見落としとか、薬剤を取り違えるとか、連絡するべきことを忘れてしまうとか、
あるいは往診現場であったら 住所間違えて別のとこ行ってしまうとか、ちょっと車を擦ってしまうとか、ファックスを間違えたところに送ってしまうといった事務ミスも含めたことです。

誤診は何かというと、診断エラーです。医師あるいは看護師等の行う診断が間違ってしまう、その患者さんの病態、状態を正確に取ることができないということです。
これは患者さんにとってはもちろん非常に不利益になりますし、 我々にとってもこういうことが起きるとショックが大きいということになります。

3)患者ー医療者関係を悪化させる
 怒りは、患者あるいは家族と医療者の関係が悪くなる元をつくります。患者、医療者関係が部分的に壊れてしまうこともあります。
 イライラしたまま話をしたりしていると、知らず知らずのうちにお互いの怒りがぶつかり合って、患者と医療者の関係が悪化してしまう。
 そうなると結局いい医療ができなくなって、患者さんにとって不利益なことが起こるし、また我々も苦しむことになります。

4)チームの和を乱す
 怒りによって、医療チームの和が乱れるということがあります。イライラして仕事をしていますと自分だけではなく、チームの雰囲気も悪くなり、チームの和が乱れます。
 チームの結束が乱れることによって 患者さんの治療というのが本来の姿でできない。これもまた患者さんの不利益にもなるし、我々にとっても痛手ということになります。

5)怒りは自分自身を壊す
 怒りによって、人格が良くないほうに変わってしまいます。私はよくよく突き詰めると、自分の人格が良くないほうに変わっていくのは、ほぼ全て怒りが原因ではないかと考えます。

参考文献
アルボッムレ・スマナサーラ、怒らないこと、だいわ文庫,2021
アルボッムレ・スマナサーラ、怒らないこと2、だいわ文庫,2022
アルボッムレ・スマナサーラ他、「怒り」SangaJapan Vol.16、2014

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